
導入
その名は「覇王龍(Haoryu)」。
名前の響きは最強クラスですが、アガベ界においては少々複雑な歴史を持つ品種です。 「メルカリで高級品種を買ったはずが、育ってみたら全然違う姿になった……」 もし、あなたの手元にそんな株があるなら、それはもしかすると覇王龍かもしれません。
かつて品種名詐欺のダミーとして流通した悲しい過去を持ちますが、株自体に罪はありません。 ボール型には決してならない、「縦に積み上がる(段積み)」という独自の成長スタイル。 本記事では、その数奇な運命と、天を衝くタワー型の魅力について解説します。
アガベ 覇王龍(Haoryu)とは?
覇王龍は、台湾にルーツを持つとされるアガベ・チタノタの一種です。 読み方は「ハオウリュウ」。漢字表記では「覇王竜」とも書かれます。
詐欺の歴史と現在
一時期、フリマアプリやオークションサイトで、「白鯨」や「シーザー」といった高級品種の偽物として、この覇王龍(またはよく似たハイブリッド)が大量に出回った過去があります。 そのため、意図せずこの株を所有している愛好家が意外と多いのが特徴です。
現在は適正な価格(数千円〜)で流通しており、その強健さとユニークな樹形から、入門種や接ぎ木の台木としても親しまれています。
覇王龍の決定的な3つの特徴
覇王龍の特徴は、流行りの「コンパクトで丸い」アガベとは真逆を行きます。
1. 空へ伸びる「タワー型フォルム」
最大の特徴は、「ボール状にはならず、縦へ縦へと積み上がる」ことです。 これは光不足による徒長ではありません。健康に育てても、葉が横に展開するよりも上に重なっていく「段積み」スタイルになるのが、覇王龍の仕様です。
2. 肉厚な「緑の丸葉」
葉は丸みを帯びており、色は濃い緑色をしています。 非常に肉厚で、水分をたっぷりと含んだ健康的なボディを持っています。
3. 素朴な「茶系鋸歯」
派手な白棘や黒棘ではなく、茶色〜飴色の鋸歯を持ちます。 洗練されたネームド品種にはない、野性味あふれるオールドスタイルの雰囲気が魅力です。
覇王龍は「ボール状」にならない? 縦に積む育成の極意
「チタノタ=ボール型」が正義とされる現代において、覇王龍を美しく育てるには発想の転換が必要です。
この品種は、どう頑張っても丸いボールにはなりません。
目指すべきは「密度の高い、立派な柱(タワー)」です。
「徒長」と「段積み」の違い
縦に伸びる性質を「徒長」と勘違いして、光を強くしすぎたり水を切りすぎたりして拗らせてしまうケースがあります。
覇王龍にとって、上に伸びること自体は健全な成長です。
育成のポイント:密度を高める
重要なのは、「葉と葉の間隔(節間)を詰める」ことです。 縦に伸びるのは止められませんが、スカスカのタワーにするか、レンガを積んだような重厚な柱にするかは、育成者の腕にかかっています。
- 光: 真上からの強力なLEDで、成長点を低く抑え込むイメージで照射します。
- 水: 成長が非常に早いため、水をやりすぎると一気に背が伸びてバランスが崩れます。「辛め(少なめ)」管理で、じっくりと積み上げていきましょう。
図鑑の発展にご協力ください
「意図せずお迎えしたけど、育ててみたら愛着が湧いた」 「うちの覇王龍、こんなに立派なタワーになったよ!」
そんな覇王龍の写真をお持ちではありませんか? Plants Chainでは、アガベ図鑑を充実させるため、皆様の愛株の写真を募集しています。 InstagramのDMより、お気軽にお写真をお送りください。
まとめ
アガベ チタノタ 覇王龍。
詐欺の道具に使われたこともありましたが、今ではその強健さとユニークな樹形で、独自の地位を築いています。 ボール型だけがアガベではありません。
縁あってあなたの手元に来たのなら、ぜひその「天を衝くタワー」をどこまで高く、美しく積み上げられるか挑戦してみてください。
基本データ
| 属性 | 詳細 |
|---|---|
| 名前 / 1 | 覇王龍 |
| 名前 / 2 | ハオウリュウ |
| 名前 / 3 | T-rex |
| 株姿 | タワー形 |
| 葉形 | 丸葉 |
| 鋸歯色 | 茶系 |
| 葉色 | 緑色 |
| その他の特徴 | – |
あなたが育成を検討しているこの品種は、アガベの中でもチタノタ・オテロイに分類されます。アガベの基本情報や魅力、アガベライフを失敗しないための情報は、【決定版】アガベ初心者向けガイドで確認できます。

