導入
アガベの室内育成を始める時、多くの人が最初に直面する失敗。 それは、ライトやアガベではなく「スチールラック(棚)のサイズ選び」のミスです。
「とりあえず安い銀色のラックを買えばいいか」 そう思って購入したラックに、後から高性能なLEDライトやサーキュレーターを取り付けようとした時、初めて気づくのです。 「ライトが近すぎてアガベが焼ける…」 「ダクトレールがはみ出して設置できない…」
スチールラックは単なる収納棚ではありません。光と風と電源を統合する「育成システム」の土台です。 本記事では、あなたの育成スタイル(ライトの種類や株数)から逆算して、後悔しない最適なラックのサイズ(幅・高さ)を選ぶための計算式を解説します。
アガベ育成棚の「幅」の選び方
ラックの幅は、「何枚のパネルライトを吊るすか」あるいは「どの長さのダクトレールを置くか」で決まります。 大は小を兼ねますが、部屋のスペースに合わせて最適なサイズを選びましょう。
幅60cm:省スペース・パネルライト1枚運用
一人暮らしや、アガベの株数が10株以内の方向けのミニマムサイズです。
- ライト: BRIM PANEL A (65W) などの正方形パネルライトが1枚ジャストで収まります。
- 注意点: スポットライトを付ける場合、ダクトレールを置く幅がないため、クリップライトでの運用がメインになります。
幅90cm:標準サイズ・拡張性◎
最も一般的なサイズで、ライトの選択肢が広がります。
- ライト: 長方形のパネルライトや、正方形パネルをゆったり1枚吊るすのに最適。
- 拡張性: スポットライトなら3〜4灯をクリップや結束バンド式のレールで設置可能です。
幅120cm:本格派・ダクトレール&ゲート運用
「お店のような環境を作りたい」「ダクトレールを使いたい」という方の推奨サイズです。
- ライト: 1mのダクトレールを設置しても左右に余裕があり、安全に運用できます。
- 推奨: HaruDesignの「ライティングゲート LG12」を棚の上に置く場合、この幅120cmのラックが必須となります(90cmでは足がはみ出します)。
アガベ育成棚の「高さ(棚間隔)」の計算式
ラックを買う前に、必ず計算してほしいのが「縦のスペース」です。 アガベ育成には、想像以上に高さが必要です。
【高さ計算式】 [ライトの厚み] + [吊り下げ距離] + [アガベの高さ] + [鉢の高さ] ≒ 必要な棚間隔
スポットライトの場合(最も高さが必要)
スポットライトは本体が大きく(約15cm)、さらにアガベとの距離を30cmほど離す必要があります。 ダクトレールやソケットの厚みも含めると、1段あたり最低でも 70〜80cm の空間が必要になります。 一般的な5段ラックの場合、棚板を1〜2枚抜かないとこの高さは確保できません。
パネルライトの場合(多段管理向き)
パネルライトは本体が薄く(約5cm)、面で発光するため距離を詰めても焼きムラが起きにくいです。 高さの制約が少ないため、棚板を増やして「多段管理(アパートマンション化)」するなら、パネルライトの方が圧倒的にスペース効率が良いです。
💡 ライトの選び方詳細 パネルかスポットか迷っている方は、こちらの比較記事で自分に合うタイプを確認してください。
アガベを引き立てる「黒」と「防錆」
サイズが決まったら、最後は「色」と「機能」です。
アガベが映える「黒(ブラック)」
アガベの緑色の葉や、黒い棘は、銀色のラックよりも「マットブラック」の背景に置いた方が圧倒的に色が映えます。 SNSに写真をアップする予定があるなら、迷わず黒いラック(ルミナス ノワールなど)を選びましょう。
長く使うための「防錆(ぼうせい)」
アガベ育成では、毎日霧吹き(葉水)をしたり、ジョウロで水をやったりします。 安価なクロームメッキのラックは、水気ですぐに錆びてしまいます。
- 推奨: 水に強い「粉体塗装(パウダーコーティング)」や「クリアコーティング」が施されたラックを選んでください。
- 黒いラックは塗装膜があるため、銀色のラックよりも比較的錆に強い傾向があります。
まとめ
スチールラックは、アガベたちの「家」であり、育成環境の「骨格」です。
- 幅: 使いたいライト(特にダクトレールやゲート)の幅に合わせて選ぶ。
- 高さ: 必要な棚間隔を計算し、棚板の枚数を調整する。
- 機能: 防錆加工されたものを選び、長く愛用する。
妥協してサイズ違いのラックを買ってしまうと、後で買い直すのは解体・処分も含めて大変な労力になります。 最初から「育成システム」として完成形をイメージし、最適な一台を選んでください。
































