- 犯人は傷の場所で絞れる:中心の新しい葉に白いかさぶた=アザミウマ、葉裏・付け根の白い点々=ハダニ、成長点の近くのゆがみ=アガベマイト。
- 薬より先に隔離と物理除去。見つけた株を他の株から離し、シャワーで洗い流します。
- アガベマイトの薬:当サイトが照会した6剤では、「花き類・観葉植物」の行にフシダニ類を名指しした登録はありません。まず隔離と洗い流しから。
- 薬は「アガベに使えるか」をラベルで確認してから。作物名に「アガベ」「多肉植物」と書かれた登録はありません。
- ローテーションは害虫ごとに作用の番号で組む。アファームとコロマイトは同じ番号なので、交互に使っても耐性の対策になりません。
症状から見分ける:アザミウマ・ハダニ・アガベマイト
アガベの硬い葉についた傷は、数年消えません。だからこそ早く見つけて、犯人を当てることが一番の対策です。まずは探す場所から。
- アザミウマ1〜2mm前後の細長い虫。成長点のすき間に入り、新しい葉に傷が残り続ける。
- ハダニ乾燥を好む小さなダニ。葉の裏や付け根に潜み、色がかすり状に抜ける。
- 予防出る前に予防する。薬はラベルの作物名・使い方・回数を確認して使う。
検索でいちばん多いアガベマイト(フシダニ)は、成長点付近に潜む見えないほど小さなダニです。葉の形が崩れ始めたら、まず疑ってください。
見つけたら最初にやること(5つの手順)
筆者の株では、まだ害虫の被害は出ていません。気をつけているのは、買うときに虫を持ち込まないことです。一度、土の中にトビムシが湧いたことがあり、はじめは驚いて慌てて対処しましたが、結果的には問題ありませんでした。見慣れない虫を見つけても、まずは落ち着いて、何の虫かを確かめてから対処しましょう。

- その株を離す棚の他の株から離し、同じトレーや受け皿を共有しないようにします。触った手や道具も洗います。
- シャワーで洗い流す葉の付け根・裏に水を当てて、虫と卵を物理的に落とします。乾燥を好むハダニには、洗い流すこと自体が物理的な対処になります。
- 写真を撮って場所を記録する傷の位置(中心・付け根・裏)を撮っておくと、上の見分け表で犯人を絞れます。あとで比べる時にも使えます。
- 薬を使うならラベルを確かめてから1剤下の早見表で「適用病害虫」と「使い方」を確認し、ラベルの範囲で使います。
- その後も水やりのたびに見る新しい傷が増えていれば、ラベルの範囲で作用の番号が違う剤に切り替えます(ローテーション)。
何の虫かを確かめたら、すぐ使えるように、スプレー剤を1本用意しておくと安心です。アザミウマ類とハダニ類の両方が登録にあるのはベニカXです(アガベに使えるかはラベルで確認。詳しくは次の章)。
薬剤の選び方:ラベルの登録内容で決める
ここで紹介する薬は、どれも農薬取締法の対象です。「よく効く」かどうかより先に、ラベルの作物名・適用病害虫・使い方を確認します。当サイトが農林水産省の登録情報で照会した結果をまとめました(登録の細部は表を参照)。
| 製品(登録番号) | 「花き類・観葉植物」の適用病害虫 | 使用時期・使い方・回数 |
|---|---|---|
| オルトランDX粒剤(第21733号) ※作物名から「ばら」「ベゴニア」「はぼたん」「ガーベラ」を除く | アブラムシ類のみ | 発生初期・1g/株(40g/㎡まで)・生育期株元処理・4回以内 |
| ベニカXファインスプレー(第22506号) ※作物名から「ばら」「花月」を除く | アザミウマ類・ハダニ類・アブラムシ類・コナジラミ類ほか | 発生初期(病気は発病初期)・原液・散布・4回以内 |
| アファーム乳剤(第19842号) | アザミウマ類(2000倍)ほか。ハダニ類は無し | 発生初期・散布・5回以内 |
| コロマイト乳剤(第18406号) | 該当する行なし | — |
| ダニ太郎(第21968号) | 該当する行なし | — |
ベニカXファインスプレー:見つけた時に手に取りやすいスプレー
希釈不要のスプレー剤で、アザミウマ類とハダニ類の両方が「花き類・観葉植物(ばら、花月を除く)」の行にあります(作物名から「花月」=クラッスラが除かれている点に注意)。なお「ブラックアンドブルー(BB)」などで薬害が出るという話は栽培者の間で語られているもので、当サイトでは一次情報を確認できていません。使う前に目立たない場所で試すことをおすすめします。商品は上の手順の章で紹介しています。
アファーム乳剤:アザミウマ類の登録がある乳剤
「花き類・観葉植物」の行にアザミウマ類(2000倍)がありますが、ハダニ類の登録はありません。名称に「家庭園芸用」の付かない農業用登録の製品です。ベニカXと作用の番号が違うので、アザミウマ類のローテーションの相手になります。
コロマイト乳剤:ハダニ向けの殺ダニ剤(作物名に注意)
ミルベメクチン乳剤です。ただし登録第18406号の適用表(89行)に「花き類・観葉植物」「観葉植物」「多肉植物」という作物名はありません(きく・宿根かすみそう等の個別の花きと、野菜・果樹のみ)。よく言われる「年1〜2回」は耐性管理の目安であって、登録上の総使用回数とは別物です。またアファームと同じ作用の番号(6)なので、ローテーションの相手にはなりません。
オルトランDX粒剤:アブラムシ類が出始めた時の株元処理
土の上に撒いて水やりをすると、成分が根から吸収されて株全体に行き渡ります(浸透移行性)。ただし「花き類・観葉植物(ばら、ベゴニア、はぼたん、ガーベラを除く)」の登録はアブラムシ類のみ・使用時期は発生初期で、虫が出る前に撒いておく使い方ではありません。アザミウマ類の登録は「ばら」、カイガラムシ(ミカンコナカイガラムシ)の登録は「クロトン」にしかなく、ハダニには効きません。「月に一度」(年12回)の常用は登録の総使用回数(4回以内)を超えます。アガベがこの作物群に該当するかはラベルの作物名で確認してください。
散布の道具:展着剤と噴霧器
乳剤は水で薄めて使いますが、アガベの葉は水を弾くため薬液が定着しにくくなります。展着剤(ダイン)も農薬取締法上の農薬(登録第4951号・用途「その他」=展着剤)で、登録上の使用量は「比較的展着の容易な作物」で散布液10Lあたり0.5〜1ml、「稲、麦、野菜、果樹等で展着しにくい作物」で1〜3mlです。混ぜてよい薬剤の範囲は各製品のラベルの記載に従ってください。
予防:持ち込まない・乾かしすぎない・毎回見る

虫対策の基本は「出る前に防ぐ」ことです。薬を使わずにできることが3つあります。
- 持ち込まない:新しい株はしばらく他の株から離して観察。服や手に付いた虫にも注意。
- 乾かしすぎない:ハダニは乾燥を好みます。梅雨〜夏はこまめな葉水と、止めない送風で葉の周りの空気を動かします。
- 水やりのたびに見る:中心の新しい葉と付け根をルーペで。早く見つけるほど、傷の残る葉が少なくて済みます。

薬剤ローテーションの組み方:同じ番号を続けない
虫は同じ作用の薬を使い続けると、耐性を持って効かなくなります。ローテーションは商品名ではなく「作用のしかた(IRAC の番号)」を、害虫ごとに変えるのが本来の意味です。
- アファームとコロマイトは同じ「6」。交互に使っても、耐性の対策になりません。
- オルトランDXとベニカXは、どちらもクロチアニジン(4A)を含みます。ラベルの「クロチアニジンを含む農薬の総使用回数」の欄のとおり、2剤を合わせて4回以内です。
- アザミウマ類: ベニカX(登録第22506号・4回以内)とアファーム乳剤(第19842号・5回以内)を交互に。各剤の総使用回数の上限内で組む(ダントツは製品ごとに登録番号・適用作物が異なるためラベルで確認)
- ハダニ類: 「花き類・観葉植物」の行にハダニ類の登録があるのはベニカXだけ。ダニ太郎(第21968号)とコロマイト乳剤(第18406号)は、いずれも適用表に「花き類・観葉植物」の行がありません。使用の可否はラベルの作物名で確認
- クロチアニジン: オルトランDX(第21733号)とベニカXは同じ成分を含み、2剤を合わせて4回以内
害虫予防カレンダー


季節の変わり目は、気温と一緒に虫の動きも変わります。増える時期の前に、見る回数を増やしましょう。
農薬を使う前に:必ず守る5つのこと


散布の日はマスク・手袋・長袖、そして屋外・風の弱い時間。準備してからラベルを読み、次の5点を確認します。
本記事で紹介した「アファーム乳剤」(農薬登録 第19842号)や「コロマイト乳剤」(第18406号)は、名称に「家庭園芸用」の付かない農業用登録の農薬です。Amazon等でも購入できますが、農薬取締法の対象であることに変わりはありません。使用にあたっては以下を必ず守ってください。
- 適用作物を最初に確認する: 農林水産省「農薬登録情報提供システム」で確認できる各剤の適用表に、作物名としての「アガベ」「多肉植物」はありません。ラベルの作物名の欄に、育てている植物か該当する作物群名(「花き類・観葉植物」など)が記載されているかを購入前に確認してください。記載のない植物への使用は農薬取締法上の適用外使用にあたります。アガベがどの作物群に該当するかは登録情報だけでは決まりませんので、判断がつかない場合は販売元に確認してください。
- 適用病害虫・希釈倍率・総使用回数はラベルどおりに: オルトランDX粒剤(第21733号)の「花き類・観葉植物(ばら、ベゴニア、はぼたん、ガーベラを除く)」はアブラムシ類・1g/株・発生初期・4回以内・生育期株元処理、アファーム乳剤(第19842号)の「花き類・観葉植物」はアザミウマ類 2000倍・5回以内・散布、ベニカXファインスプレー(第22506号)の「花き類・観葉植物(ばら、花月を除く)」は原液・4回以内・散布が登録内容です。コロマイト乳剤(第18406号)とダニ太郎(第21968号)の適用表には「花き類・観葉植物」の行がありません。
- 使用方法もラベルどおりに: 散布・株元処理・土壌混和は登録上区別されています。オルトランDX粒剤で「植穴処理土壌混和」が登録されているのはトマト・なす・きゅうりの3行のみで、「花き類・観葉植物」にはありません。
- 防護対策: 散布時はマスク、手袋、長袖を着用し、薬剤を吸い込んだり肌に付着させたりしないようにしてください。
- 散布場所と飛散への配慮: 室内での散布は避け、風の弱い時間帯にベランダや屋外で行ってください。近隣の住宅・洗濯物・ペット・水路への飛散に配慮します(「住宅地等における農薬使用について」環境省・農林水産省通知)。
よくある質問
まとめ
美しいアガベを守れるのは、育成者であるあなただけです。
- 見つける:水やりのたびに中心と付け根を見る。傷の場所で犯人を絞る。
- まず物理:隔離とシャワー。新しい株はしばらく離して観察。
- 薬はラベルで選ぶ:オルトランDX粒剤(登録第21733号)を使うなら、ラベルの適用作物・使用方法・総使用回数の範囲で。
- ローテーションは害虫ごとに番号で:同じ作用の番号を続けない。
